全豪オープン特別編集・メルボルン便り
◇森田あゆみ、クルム伊達公子とも善戦及ばず。16強進出ならず------------◇
[女子シングルス3回戦]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○セリーナ・ウィリアムズ(米国) 6-1,6-3 ●森田あゆみ
■「今の力を全部出せた。これからに続くプレーができたと思います」。森田は
満足そうに振り返った。森田が奪ったのは計4ゲームだったが、もっと大きなも
のを手にしたという表情だった。
■試合開始がコールされると、セレナは「女王のお出まし」とでもいうように、
もったいぶった所作でポジションにつき、サーブの構えに入る。静まりかえる観
客席。セリーナが早くも会場のムードを支配した。しかし、森田が雰囲気に飲ま
れることはなかった。ゲームを奪うのは簡単ではなかったが、いいラリーが何本
もあった。相手の甘いボールには、ポジションを上げて強打を見舞った。2回戦
のあとで話したように、セリーナを相手に「自分が今取り組んでいるテニス」を
実践した。
■第2セットは3-0と先行した。すると、ここまで静かにプレーしていたセリ
ーナが、にわかに気迫を全面に押し出してきた。相手の「気合い」を察知した森
田は「変に力んで」サーブのリズムを狂わせる。ここから6ゲーム連取を許し、
森田のチャレンジは終わった。「差を感じたのはサーブ力。フィジカルも足りて
いない」という森田だが、「思ったよりできた」と手応えも口にした。
■「何度もグランドスラムを取っている素晴らしい選手とセンターコートで戦う
というのは、テニスを始めたときには想像もしていなかった」と感慨深げな森田。
その感慨は次の瞬間、モチベーションへと変わった。「また、こういうコートで
試合をして、いつか勝ちたい」。そのために「毎日、やるべきことをしっかりや
っていく」。この敗戦は、森田のテニス人生で一つの分岐点となるかもしれない。
[女子シングルス3回戦]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○ボヤナ・ヨバノフスキ(セルビア) 6-2,7-6(3) ●クルム伊達公子
■敗れてなお強いと感じさせるクルム伊達だった。序盤は完全に相手のペース。
ヨバノフスキはしっかりスピンのかかったグラウンドストロークで両サイドに深
くコントロールし、伊達に自分の形で打たせない。第1セットは2-6で決着し
た。
■しかし、第2セットは様相が変わる。ヨバノフスキが気持ちよくストロークを
打てなくなった。伊達は試合後、戦術面で切り替えたことを明かした。「スライ
スを入れてペースを変えたのと、ラリー戦で主導権を握れなかったので、とにか
く、しつこく、と」。これが功を奏し、伊達のリズムでボールが行き来する場面
が増える。ヨバノフスキは不十分な状況での強打を強いられ、アンフォーストエ
ラーを重ねていった。
■2番コートには日本とセルビアのサポーターも多く詰めかけ、フェドカップの
ような応援合戦となった。42歳がまたミラクルを起こそうとしている。伊達は5
-5からの相手のサービスゲームを破り、6-5。しかしブレークバックを許し、
セットの行方はタイブレークにもつれ込んだ。ここではヨバノフスキが見事だっ
た。相手に行きかけた流れを断ち切るように、攻撃的なグラウンドストロークを
躊躇なく打ち切った。
■「もう一つ抜け出したかったが、抜け出せなかった」と振り返った伊達。「相
手がよかった。ボールが深いのと、普段はもっとミスが多いのに、今日はしつこ
さがあった」。伊達は、何度か練習に誘ったこともある、21歳年下の相手を称え
た。
■68年のオープン化以降、四大大会で40代以上の女子が4回戦に勝ち進んだ例は
ない。大記録には、あと一歩届かなかった。しかし、1回戦で大会最年長勝利
(オープン化以降)を飾った伊達は、間違いなく女子テニスに新しい歴史を刻ん
だと言っていい。
by shinozuka-tennis | 2013-01-20 09:39 | テニス | Comments(0)

